LOGISTICS FRONTIER INTERVIEWS
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特別取材・後編 渡辺景吾さん

インタビュー抜粋:日本の物流の課題と、これからの若い世代へ

Q. 国際物流を担う上で、海外人とのやりとりに苦難はありましたか?

渡辺氏: それはもう、ありましたよ。僕らのやっている国際物流、特にNVOCC(非船舶運航業者)のビジネスは、自分たちで世界中に支店を持つわけじゃないから、現地の「代理店」とどれだけ強固な信頼関係を結べるかがすべてなんです。でも、文化も歴史も、お金の価値観も全く違う人間同士が机を挟むわけだから、一筋縄ではいかないことばかりでしたね。

Q. 具体的にどのような問題がありましたか?

渡辺氏: 例えばロシア(当時はソ連)のレニングラードに代理店を開拓しに行ったときの話です。ビジネスの話をしに会議室に入ったら、最初は向こうの担当者が出てきて話を聞いていた。だけど、僕らがやっている混載(LCL)という小口の物量規模だと分かった瞬間、何も言わずにすーっと会議室から黙っていなくなっちゃったんです。「お茶でも取りに行ったのかな」と思って1時間待っても戻ってこない。おかしいなと思って、事務所の奥を通って帰ろうとしたら、その担当者たちがさ、何事もなかったかのように自分の仕事をパチパチやってるわけよ。「ああ、興味がないから、もうお前らとは話さない、さようなら」ってことなんだね。断りの言葉すら言わない。あの時は「こいつらとは絶対に仕事ができないな」と、本当に嫌な思いをしました。

それから、お金の価値観のズレも難しかった。 コンテナ1本動かすと、お互いに「イコールパートナー」として日本と海外の代理店で手数料(例えば100ドルずつ)を分け合うことになります。でも、日本と海外では物価が全然違うじゃないですか。日本の100ドルなんて、当時の感覚でも1日分の小遣いみたいなものだけど、物価の安い国に行けば、それが1ヶ月分の給料に近い重みを持つこともある。この不公平感から揉めるわけです。どうやって公平に「ジャッジ」するかは最後まで本当に難しい問題でした。

Q. 英語が必須だと思いますが、翻訳機もない時代にどのように学んでいったのでしょうか。

渡辺氏: よく「英語はどうやって勉強したんですか」と聞かれますが、実はビジネスの英会話なんて、単語を繋げていけばなんとかなるものなんですよ。僕自身、そんなに英語がペラペラなわけじゃない。本当に大事なのは「アフター5の会話」に勇気を持って飛び込めるかどうかです。
ただ、僕が日本代表を務めたオランダのロイヤル・ヴァン・オメレン社で行われていた『ハーバー・デイ(Harbor Day)』という研修プログラムは、本当に強烈でした。

Q. どのようなプログラムだったのでしょうか。

渡辺氏: 世界各地から約50人のメンバーが島にある合宿所に集められ、2週間、英語漬けで叩き込まれます。その内容が実にユニークで過酷なんです。
例えば、「指を一切使わずに、言葉(英語)の指示だけでジグソーパズルを組み立てる」という意思疎通のワーク。さらに、夜7時に「工場の緊急トラブル」に関する分厚いケーススタディをバサッと渡されます。そこから深夜2時までみんなで浴びるほど酒を飲むのですが、翌朝5時にはたたき起こされてマラソン、午前10時の授業では「お前ならどう決断する?」と社長直々に指名されるわけです。もう、毎日心臓がバクバクでした。

この極限の研修で僕が学んだのは、「知ったかぶり」をするのが一番恥ずかしいということでした。 最初はみんな、プライドがあるから分かったふりをして頷くけれど、そんなの筒抜けです。だから僕は途中から、会議中に堂々と辞書を引っ張り出すようにしました。周りからバカにされても、「俺は分からないから辞書を引いているんだ。何が悪いんだ」と開き直ったんです。
そうやって恥を捨てて素直に聞くと、相手も「なんだ、そんなことも知らないのか」と笑って、そこから本当の人間関係が始まる。わからないことを恥とせず、素直に相手の懐に入り込むマインドは、あの過酷なプログラムで無理やり叩き込まれましたね。

Q. 日本の海運物流の課題と対策についてどのように考えていますか。

渡辺氏: 日本の物流を良くするための急所は、「港湾の一元化」「地方港の活用」、この2つに尽きます。まず、日本の港は本当に利権と役所の縦割りが酷すぎる。 アメリカのロサンゼルスとロングビーチは、BL(船荷証券)の上では「どっちに船をつけてもいいよ」と一本化(一元化)されています。でも、日本では東京と横浜、大阪と神戸がバラバラです。 東京から横浜にコンテナを移動させるだけの短い距離で、シャシー(台車)が足りないからって、普通なら8千円で済むところに5万円も払わなきゃいけないような、バカげた無駄が発生している。これらは本来、1つに一元化すべきなんです。

さらに深刻なのは、日本の港に「世界の超大型コンテナ船」が物理的に入ってこられなくなっている(日本スキップ問題)ということです。 今の最新のコンテナ船は2万本積みという巨大なもので、水深が18メートル必要です。でも、日本で一番深い横浜の南本牧でもせいぜい17メートルしかない。つまり、世界の大動脈を走る超大型船は、日本を通り過ぎて、水深が十分にあって国が総力を挙げて整備した韓国の「釜山港」に直接入ってしまうんです。

そこで、私は釜山を日本の地方港のハブとして使おうと考えました。船の中を移動している間、運転手は誰も運転していないわけだから、人件費もかからないし、何より陸送するよりコストが抜群に安くなります。(荷役料抜きで)しかし、これを本気でやろうとすると国交省やら港湾、陸運業界の利権が関わってくる。日本の物流の未来を救うのは、間違いなくこういう地方の港をハブで繋ぐことやこのような柔軟な発想だと思います。

Q. 若い世代の物流への興味を引くためにどうしたらよいでしょうか。物流の魅力とは?

渡辺氏: みんな、モノが当たり前に届くと思っているけれど、物流の本質的な面白さに気づくためには、まず「地図(できれば地球儀)をじっくり見ること」をお勧めしたいですね。地図を見て、ここへ運ぶにはどこをつなげればよいか、「こことここを繋いだら、誰もやっていないルートができる。絶対面白い!」って、自分で新しい物流の仕組みを設計して、それが実際に世界を動かしたときの快感は、何物にも代えがたい面白さがあります。仕組みがバチっとハマると信じられないくらい儲かるし、本当に知的なゲームなんですよ。

Q. 今の若い世代にアドバイスするなら何を言いますか?

渡辺氏: 一つは、絶対に「英語」と、それから「スペイン語」をやっておきなさい、ということ。 英語ができないと、これからの時代、インターネットのスピード感にも絶対についていけない。それに加えて、スペイン語。スペイン語を話す国(南米など)は世界中にたくさんあるので、これを少しでも話せると、ビジネスにおける君たちの価値は爆発的に上がると思います。

そしてもう一つ、僕が一番伝えたいのは、 「足の裏の面積だけの人生を送るな」 ということです。
仕事ばかりに目を向けて、「これが自分の仕事だ、これしかやらない」と、心に余裕を持たずに生きている人間は、いざ修羅場(崖っぷち)に立たされたときに、緊張と恐怖で足がすくんで、平常心を失って真っ逆さまに落ちてしまう。

だからこそ、人生には「遊び心」や「ゆとり(余白)」、つまり仕事とは全く関係のない「趣味」をたくさん持っておくべきなんです。 絵を描く、骨董品を集める、釣りをする、何でもいい。仕事とは違う世界(余白)を自分の中に広く持っていれば、崖の上に立たされたときでも、「いざとなったら、この広い余白のスペースに、ひょいと横に避ければいいや」って思えるから、平常心でいられる。 僕がどんなに会社で何億円もの賠償問題に巻き込まれたり、家を担保に入れるような修羅場を経験したりしても、こうやって笑って生き残ってこられたのは、自分の中に仕事以外の「遊びの余白」がたっぷりあったからだと思っています。これから社会に出る君たちには、どうか仕事だけの人間にならず、人生を本気で面白がる「遊び心」を忘れずに、豊かなキャリアを歩んでほしいですね。

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